大切だった時間
私はパパと1年に1度の旅行にきている。
私が小学生のときにパパとママは離婚してしまって、今はパパには新しい家族がいるけれど・・・。
私のことも大切な娘だと1年に1度だけ二人で旅行に行くのが恒例になっている。
今年はパパの仕事が忙しいから近場にはなったけれど、いつも遠くに行っていたから近場も新鮮だった。
昨日今日と新しくできたテーマパークへ行ったり、有名な史跡を巡ったり、美味しいものを食べたりと楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
明日の夜にはこの旅行は終わってしまって、またいつもの毎日が始まる。
「そろそろシャワー浴びておいで」
テレビを見ながらぼーっとしていると、聞こえてくるパパの声。
促されて私は「はーい」とバスルームに向かった。
ホテルにしては広いバスルームで浴槽にお湯を溜めながら体を洗い、続いて髪の毛を洗う。
ふわふわとしたシャンプーの泡でごしごしと地肌を洗った後、トリートメントを毛先にたっぷりとつけて優しく馴染ませて流す。
洗い終えた髪をタオルできゅっとまとめて浴槽にちゃぷんと浸かった。
髪を伸ばし始めたのはいつだっただろう・・・。
小さな頃はショートカットだった私。
確か小学生の頃にTVで見た髪の長いアイドルに憧れてから伸ばしたんだっけ・・・?
高校生になったくらいから、オシャレに興味を持つようになって毎日念入りにトリートメントしたり、お金を貯めてマイナスイオンのドライヤーを買ったりして。
私がバスタイムを終えて戻ると「じゃあ俺も行ってくるよ」と入れ違いにパパがシャワーを浴びにソファーを立った。
「いってらっしゃい」と見送ってから、私はタオルでしっかりと髪の毛を拭いてからドライヤーをかけた。
水気を含んでいた髪がだんだん乾き、さらさらとドライヤーの温風で踊り始めた。
乾かし終わった私の髪は胸のあたりで揺れている。
閉められたカーテンを少しだけ開けて窓の外を眺める。
幾千もの光がぼんやりと届く夜景は見ているだけで時間を忘れそうになる。
「どうした?」
後ろから声をかけられて初めてパパがシャワーを終えて戻ってきたのに気づいた。
「パパ・・・外、きれいだね」
「ああ、そうだな」
パパの手が私の肩にそっと触れる。
しばらく二人で夜景を眺めていた。
「それにしても、清香もきれいになったな」
「えっ、急にどうしたの!?」
突然のパパの言葉にびっくりしてしまった。
「たまにしか会わないからな・・・会うといつも清香の成長にはびっくりするよ」
にっこり笑顔で私の頭をガシガシと撫でる。
パパがその撫でる手を止めて、私の髪に手櫛を通す。
「髪も、きれいだな」
そう褒めてくれたパパに意を決して切りだした。
「あのね、お願いがあるんだけど・・・」
「ん?お願い?」
「うん・・・えっとね、髪を切ってほしいの」
私のお願いにパパは唖然としていた。
「髪を切るって・・・清香の髪を?」「うん」
「今から!?」「うん」
次々に降ってくるパパからの質問に私は至って淡々と答える。
「でも、ハサミだってないし」
そう言い訳めいた言葉に「これを使って」とポーチに忍ばせてあったハサミを取り出してみせた。
前髪を自分で切るときに使っているヘアカット用のハサミだ。
「どうしても?」
パパが真剣な声で尋ねてきた。
「うん」
私はパパの目をじっと見つめて答えた。
「ちょっと待ってて」とパパは一昨日買った新聞を床に何重にも敷き始めた。
そしてその上に椅子をちょこんと置く。
椅子を指さしてここに座るように促され、私は着ていたガウンを脱いでソファに置いた。
「!」
目を見開いて驚いた様子のパパが言葉を発するのを制止するように私はクスっと笑って
「だってケープとかないでしょ?この方が後片付け楽だと思うから」
とキャミワンピ1枚で用意された椅子に座った。
少し腑に落ちないような表情を残しながらもパパは「しょうがないな」と納得してくれた。
パパの手が私の髪に触れてゆっくり櫛が通され、暖かいパパの手の気持ちよさについうとうとしまいそうになる。
「それで、どれくらい切るの?」
パパの声で眠気は一瞬で振り払われた。
「あのね・・・前にパパが切ってくれてた時みたいにしてほしい」
私が小さかった頃、ママは手先が不器用だからか私の髪はいつもパパが切っていた。
私が小さかった・・・ショートカットだった頃。
「そんなに切るの?」
パパが心配そうな顔で私の顔を覗き込む。
「ずっと大事に伸ばしてきたんじゃないの?何かあったのか?」
と続けるパパに
「何もないよ。ただ、暑くなってきたし久しぶりに短くしようかなって思っただけ」と笑顔で返した。
私が小学生のときにパパとママは離婚してしまって、今はパパには新しい家族がいるけれど・・・。
私のことも大切な娘だと1年に1度だけ二人で旅行に行くのが恒例になっている。
今年はパパの仕事が忙しいから近場にはなったけれど、いつも遠くに行っていたから近場も新鮮だった。
昨日今日と新しくできたテーマパークへ行ったり、有名な史跡を巡ったり、美味しいものを食べたりと楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
明日の夜にはこの旅行は終わってしまって、またいつもの毎日が始まる。
「そろそろシャワー浴びておいで」
テレビを見ながらぼーっとしていると、聞こえてくるパパの声。
促されて私は「はーい」とバスルームに向かった。
ホテルにしては広いバスルームで浴槽にお湯を溜めながら体を洗い、続いて髪の毛を洗う。
ふわふわとしたシャンプーの泡でごしごしと地肌を洗った後、トリートメントを毛先にたっぷりとつけて優しく馴染ませて流す。
洗い終えた髪をタオルできゅっとまとめて浴槽にちゃぷんと浸かった。
髪を伸ばし始めたのはいつだっただろう・・・。
小さな頃はショートカットだった私。
確か小学生の頃にTVで見た髪の長いアイドルに憧れてから伸ばしたんだっけ・・・?
高校生になったくらいから、オシャレに興味を持つようになって毎日念入りにトリートメントしたり、お金を貯めてマイナスイオンのドライヤーを買ったりして。
私がバスタイムを終えて戻ると「じゃあ俺も行ってくるよ」と入れ違いにパパがシャワーを浴びにソファーを立った。
「いってらっしゃい」と見送ってから、私はタオルでしっかりと髪の毛を拭いてからドライヤーをかけた。
水気を含んでいた髪がだんだん乾き、さらさらとドライヤーの温風で踊り始めた。
乾かし終わった私の髪は胸のあたりで揺れている。
閉められたカーテンを少しだけ開けて窓の外を眺める。
幾千もの光がぼんやりと届く夜景は見ているだけで時間を忘れそうになる。
「どうした?」
後ろから声をかけられて初めてパパがシャワーを終えて戻ってきたのに気づいた。
「パパ・・・外、きれいだね」
「ああ、そうだな」
パパの手が私の肩にそっと触れる。
しばらく二人で夜景を眺めていた。
「それにしても、清香もきれいになったな」
「えっ、急にどうしたの!?」
突然のパパの言葉にびっくりしてしまった。
「たまにしか会わないからな・・・会うといつも清香の成長にはびっくりするよ」
にっこり笑顔で私の頭をガシガシと撫でる。
パパがその撫でる手を止めて、私の髪に手櫛を通す。
「髪も、きれいだな」
そう褒めてくれたパパに意を決して切りだした。
「あのね、お願いがあるんだけど・・・」
「ん?お願い?」
「うん・・・えっとね、髪を切ってほしいの」
私のお願いにパパは唖然としていた。
「髪を切るって・・・清香の髪を?」「うん」
「今から!?」「うん」
次々に降ってくるパパからの質問に私は至って淡々と答える。
「でも、ハサミだってないし」
そう言い訳めいた言葉に「これを使って」とポーチに忍ばせてあったハサミを取り出してみせた。
前髪を自分で切るときに使っているヘアカット用のハサミだ。
「どうしても?」
パパが真剣な声で尋ねてきた。
「うん」
私はパパの目をじっと見つめて答えた。
「ちょっと待ってて」とパパは一昨日買った新聞を床に何重にも敷き始めた。
そしてその上に椅子をちょこんと置く。
椅子を指さしてここに座るように促され、私は着ていたガウンを脱いでソファに置いた。
「!」
目を見開いて驚いた様子のパパが言葉を発するのを制止するように私はクスっと笑って
「だってケープとかないでしょ?この方が後片付け楽だと思うから」
とキャミワンピ1枚で用意された椅子に座った。
少し腑に落ちないような表情を残しながらもパパは「しょうがないな」と納得してくれた。
パパの手が私の髪に触れてゆっくり櫛が通され、暖かいパパの手の気持ちよさについうとうとしまいそうになる。
「それで、どれくらい切るの?」
パパの声で眠気は一瞬で振り払われた。
「あのね・・・前にパパが切ってくれてた時みたいにしてほしい」
私が小さかった頃、ママは手先が不器用だからか私の髪はいつもパパが切っていた。
私が小さかった・・・ショートカットだった頃。
「そんなに切るの?」
パパが心配そうな顔で私の顔を覗き込む。
「ずっと大事に伸ばしてきたんじゃないの?何かあったのか?」
と続けるパパに
「何もないよ。ただ、暑くなってきたし久しぶりに短くしようかなって思っただけ」と笑顔で返した。
「じゃあ・・・切るよ」
そう言うと私の右側に立っているパパは右サイドの髪を手にとってハサミを構えた。
ジョキジョキ・・・ジョキン・・・
その音が止むとパパの手には20センチを超えるであろう髪が握られていて、私の髪はパサっと顎先で揺れているようだ。
パパはその髪を机の上にも敷いた新聞紙の上に優しく置いた。
今度はパパが左側に移って右側と同じようにハサミを構え、すぐにジョキジョキという音が響いた。
やはり右側同様に私の髪は顎先でゆらゆらと揺れ、さっきまで胸のあたりで揺れていた髪はパパの手に握られていた。
パパはその髪をまたさっきと同じ場所に置くと今度は背後にまわり、後ろの髪を手にとりジョキ・・・ジョキ・・・とハサミが進められた。
プツン、と手にとられていた髪を切り終えると、パパは切った髪を置いて、短くなった私の髪をサラっと撫でた。
「髪の短い清香もかわいいな。なんだか懐かしい」
そう言いながらパパはアメニティのヘアクリップで後ろの髪をブロッキングしていく。
ザクザク・・・シャキシャキ・・・と軽快な音を立てて髪の毛が切られていく。
そういえば、髪を短くするのはパパとママが別れて以来だ。
2、3か月に一度パパに髪を切ってもらっていたのが、パパが家を出てからなくなって。
美容院に行くようになって、流行の髪型にしたりもしたけど・・・なぜか短くすることはなかったな。
今この場所で髪を切ってもらっていることを忘れそうなくらい、過去を思い出して浸っていた。
いつの間に後ろを切り終えたのか、パパの姿が後ろから右側に移って私の視界に入る。
「清香?やっぱ切らない方がよかった?」
パパのその言葉に私は即座に答える。
「そんなことない・・・。なんで?」
するとパパは私の頬を指でなぞり
「清香が泣いてるから」
と困った顔で、でもとても優しい顔で涙を拭ってくれた。
「あっ・・・」
パパに言われて自分が泣いていたことにやっと気づいた。
でもそれは髪を切った後悔からじゃない。
「パパ・・・私ね、髪を切ったのが悲しくて泣いてるんじゃないの」
「うん・・・」
「だから続けて?」
私がそう言うとパパは右サイドの髪をブロッキングして、シャキシャキとハサミを動かし始めた。
「昔のこと思い出してね」
「うん」
「私、パパが家を出てから髪を伸ばし始めたじゃない?」
「そういえば、そうだったかな」
「あれから短くしたことってなかったじゃない?」
「ああ、そうだな」
シャキッ・・・パサパサ
軽くなったはずの髪はまだまだ軽くなっていく。
「髪の毛を大切に伸ばしてたっていうのもあるんだけどね。長い髪好きだったし」
「うん」
「でも私、パパ以外の人に髪を短くされたくなかったのかもって思う。今振り返れば、だけど」
「・・・」
「私ね、パパに髪を切ってもらうのが好きだった」
「切りすぎだってよく怒ってたのに?」
「うん・・・確かにそうなんだけど、切ってもらってる間のパパとの会話とか私の髪を触るときの暖かい手とかが好きで、大切な時間だったよ」
「ごめんな、急に離れて暮らすことになって」
「いいの、わかってるから。それに一緒に暮らしてたとしても、ずっとパパに髪を切ってもらうわけじゃないだろうし」
「ハハハ、そうだよな。でも俺も清香の髪を切ってる時間は楽しかったな」
そんな会話をしているうちに、すっかり頭は軽くなり、床に敷かれた新聞紙の上には細かく切られた髪がたっぷりと落ちていた。
パパは私の顔についた髪を手で払うと、手鏡を渡してくれた。
「お疲れ。できたよ」
私は渡された手鏡で自分の姿を確認する。
耳は半分くらい露出し、レイヤーが入っているからか上の方の髪は短く、ふんわりとしたシルエットになっている。
唯一大きな変化をしていないのは前髪くらいだ。といっても、目にかかるくらいまで伸びていたのが今ではギリギリ眉毛にかかるくらいになってるけど。
「わぁ・・・」
思わず私がもう片方の手で後ろの髪にクシャっと触れると、今までは長く手櫛を通せた髪もすぐになくなり、手は空を泳いだ。
「バッサリ切ったもんなぁ。まだ慣れないんだろ?」
私の様子を見て、パパは悪戯な笑みを浮かべてそう言った。
後片付けはしておくから髪を流しておいでというパパの言葉に、再び私はバスルームへ向かった。
改めて鏡で切ってもらったばかりの髪型を見るとやっぱり短い。
再度の髪で隠していた顔のラインもばっちり見えてしまっているし、角度を変えて斜め後ろを見ると後ろの髪は襟足にやっとかかるくらいのところで切られている。
この姿に恥ずかしさのような気持ちはあるけれど、不思議と悲しさはなかった。
どちらかというとすっきりとした気分で、この髪型もそれなりに似合っているような気がする。
短くなった髪を洗い流すのはあっという間だった。
バスルームを出ると、片づけを終えたパパがソファーで一息ついていた。
私は濡れた髪をあっという間に乾かし終えると、隣に腰を下ろす。
「パパ、ありがと」
私のお礼の言葉に対してパパは「おう」と小さく応え、
「よく似合ってる。かわいいぞ」と、私の髪をくしゃくしゃと撫でまわした。
あとがき
このお話は清香が17~20歳くらい、パパが37~40歳くらいのイメージで書きました。実はパパはとあるアーティストをモデルにイメージを膨らませています。ライブDVDを観ているとき、父性のようなふんわり優しい雰囲気に、この人に髪の毛切ってもらったら幸せだろうなぁと思いつき、執筆に至りました(笑)あんまり口調
とかは雰囲気出せませんでしたが・・・。
そう言うと私の右側に立っているパパは右サイドの髪を手にとってハサミを構えた。
ジョキジョキ・・・ジョキン・・・
その音が止むとパパの手には20センチを超えるであろう髪が握られていて、私の髪はパサっと顎先で揺れているようだ。
パパはその髪を机の上にも敷いた新聞紙の上に優しく置いた。
今度はパパが左側に移って右側と同じようにハサミを構え、すぐにジョキジョキという音が響いた。
やはり右側同様に私の髪は顎先でゆらゆらと揺れ、さっきまで胸のあたりで揺れていた髪はパパの手に握られていた。
パパはその髪をまたさっきと同じ場所に置くと今度は背後にまわり、後ろの髪を手にとりジョキ・・・ジョキ・・・とハサミが進められた。
プツン、と手にとられていた髪を切り終えると、パパは切った髪を置いて、短くなった私の髪をサラっと撫でた。
「髪の短い清香もかわいいな。なんだか懐かしい」
そう言いながらパパはアメニティのヘアクリップで後ろの髪をブロッキングしていく。
ザクザク・・・シャキシャキ・・・と軽快な音を立てて髪の毛が切られていく。
そういえば、髪を短くするのはパパとママが別れて以来だ。
2、3か月に一度パパに髪を切ってもらっていたのが、パパが家を出てからなくなって。
美容院に行くようになって、流行の髪型にしたりもしたけど・・・なぜか短くすることはなかったな。
今この場所で髪を切ってもらっていることを忘れそうなくらい、過去を思い出して浸っていた。
いつの間に後ろを切り終えたのか、パパの姿が後ろから右側に移って私の視界に入る。
「清香?やっぱ切らない方がよかった?」
パパのその言葉に私は即座に答える。
「そんなことない・・・。なんで?」
するとパパは私の頬を指でなぞり
「清香が泣いてるから」
と困った顔で、でもとても優しい顔で涙を拭ってくれた。
「あっ・・・」
パパに言われて自分が泣いていたことにやっと気づいた。
でもそれは髪を切った後悔からじゃない。
「パパ・・・私ね、髪を切ったのが悲しくて泣いてるんじゃないの」
「うん・・・」
「だから続けて?」
私がそう言うとパパは右サイドの髪をブロッキングして、シャキシャキとハサミを動かし始めた。
「昔のこと思い出してね」
「うん」
「私、パパが家を出てから髪を伸ばし始めたじゃない?」
「そういえば、そうだったかな」
「あれから短くしたことってなかったじゃない?」
「ああ、そうだな」
シャキッ・・・パサパサ
軽くなったはずの髪はまだまだ軽くなっていく。
「髪の毛を大切に伸ばしてたっていうのもあるんだけどね。長い髪好きだったし」
「うん」
「でも私、パパ以外の人に髪を短くされたくなかったのかもって思う。今振り返れば、だけど」
「・・・」
「私ね、パパに髪を切ってもらうのが好きだった」
「切りすぎだってよく怒ってたのに?」
「うん・・・確かにそうなんだけど、切ってもらってる間のパパとの会話とか私の髪を触るときの暖かい手とかが好きで、大切な時間だったよ」
「ごめんな、急に離れて暮らすことになって」
「いいの、わかってるから。それに一緒に暮らしてたとしても、ずっとパパに髪を切ってもらうわけじゃないだろうし」
「ハハハ、そうだよな。でも俺も清香の髪を切ってる時間は楽しかったな」
そんな会話をしているうちに、すっかり頭は軽くなり、床に敷かれた新聞紙の上には細かく切られた髪がたっぷりと落ちていた。
パパは私の顔についた髪を手で払うと、手鏡を渡してくれた。
「お疲れ。できたよ」
私は渡された手鏡で自分の姿を確認する。
耳は半分くらい露出し、レイヤーが入っているからか上の方の髪は短く、ふんわりとしたシルエットになっている。
唯一大きな変化をしていないのは前髪くらいだ。といっても、目にかかるくらいまで伸びていたのが今ではギリギリ眉毛にかかるくらいになってるけど。
「わぁ・・・」
思わず私がもう片方の手で後ろの髪にクシャっと触れると、今までは長く手櫛を通せた髪もすぐになくなり、手は空を泳いだ。
「バッサリ切ったもんなぁ。まだ慣れないんだろ?」
私の様子を見て、パパは悪戯な笑みを浮かべてそう言った。
後片付けはしておくから髪を流しておいでというパパの言葉に、再び私はバスルームへ向かった。
改めて鏡で切ってもらったばかりの髪型を見るとやっぱり短い。
再度の髪で隠していた顔のラインもばっちり見えてしまっているし、角度を変えて斜め後ろを見ると後ろの髪は襟足にやっとかかるくらいのところで切られている。
この姿に恥ずかしさのような気持ちはあるけれど、不思議と悲しさはなかった。
どちらかというとすっきりとした気分で、この髪型もそれなりに似合っているような気がする。
短くなった髪を洗い流すのはあっという間だった。
バスルームを出ると、片づけを終えたパパがソファーで一息ついていた。
私は濡れた髪をあっという間に乾かし終えると、隣に腰を下ろす。
「パパ、ありがと」
私のお礼の言葉に対してパパは「おう」と小さく応え、
「よく似合ってる。かわいいぞ」と、私の髪をくしゃくしゃと撫でまわした。
あとがき
このお話は清香が17~20歳くらい、パパが37~40歳くらいのイメージで書きました。実はパパはとあるアーティストをモデルにイメージを膨らませています。ライブDVDを観ているとき、父性のようなふんわり優しい雰囲気に、この人に髪の毛切ってもらったら幸せだろうなぁと思いつき、執筆に至りました(笑)あんまり口調
とかは雰囲気出せませんでしたが・・・。
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